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2016.11.23 (Wed)

『私の番だよ』

今更ながら、ラブライブ サンシャイン!にはまってしまいました。
アニメはリアルタイムで見ていたのですが、11話で完全に曜ちゃんにもっていかれ…ああいう、真面目で要領よくて周りをよく見ていて抱え込んじゃう器用に見えて不器用な子はもう…どストライクでした…。

調子に乗って数年ぶりにSSを書いてみました。
好きな組み合わせはようりこ、なはずですが、やっぱり話を書いていると千歌ちゃんも絡んでようりこなのかようちかなのか分からない感じに…ようちかりこ、って言うんでしょうか…!

続きからSSです。器用に見えて不器用な曜ちゃんを梨子ちゃんが優しくあばく話。
【More・・・】

コーチから今度の大会のお知らせが配られる。
日時は来週の土曜日19日……9時集合。ふむふむ。
高飛び込みの競技開始は……13時。頭にスケジューリングしていると、ちかちかっと頭の中に響く警告音。
何かに引っかかったらしい、ともう一度、お知らせの紙を見てみる。

じゅうくにち、どようび、じゅうさんじから。

「って、ええええーーーー!?」

ワンテンポもツーテンポも遅れて私の声がプールサイドに響いた。






『私の番だよ』






「うるさいぞ、わたなべ!」

なんて怒られたみたいだけど、私はそんな言葉が耳に入らない状態だった。
髪の毛を拭くのもそのままにプールを後にする。
更衣室でなんとか制服に着替えて、外に出ると千歌ちゃんと梨子ちゃんが待っていた。

「おっつかれー!」

のんきな千歌ちゃんの声が響く。

「あ、うん、お疲れ……」

やっとのことで声を絞り出したけれど、情けない声になってしまった。

「お疲れ様。どうかしたの?」

そう言って私の顔を覗き込んでくるのは梨子ちゃん。
え、もう何か察したの、梨子ちゃんってエスパー!? と思ったら、「ほら、髪の毛、濡れたまんま」と梨子ちゃんは私が首にかけたタオルに手を伸ばしてきた。
大丈夫だよ、と上がりかかっていた梨子ちゃんの手を取って下ろさせる。

「そう?」

梨子ちゃんはそれでも心配そうに私を見るけれど、私は気づかれたくなくてタオルで頭を乱暴に拭いた。
ごめん、梨子ちゃん。心配してくれてありがとう。でも、今はどうしたもんかと頭を整理する時間が欲しい。
そんな私たちのやり取りを小首を傾げて見ていた千歌ちゃんだったけれど、気を取り直したように手をぱちん、と合わせた。

「そうそう、曜ちゃん! 今日はみんなで新曲の振りを最後まで通しでやれたんだよ!」
「失敗もしなかったし、息もしっかり合ってたよね」

ねー、なんて千歌ちゃんと梨子ちゃんが顔を見合わせて笑っている。

「あとは、明日、曜ちゃんと私でポジション確認して通しでやればバッチリだね!」

無邪気な千歌ちゃんの発言に胸がどきりとした。

「そう、だね」
「来週の土曜日が本番だから結構余裕があるよね、千歌たちのスクールアイドルとしての自覚っていうのかな! そういうのがきっと高くなってきたんだね! この勢いでもう1曲、作っちゃう!? 梨子ちゃん!」
「もう、千歌ちゃんたら……気持ちはわかるけど、もう1曲はさすがに無理よ」

歩き出した2人の後ろをなんとか私はついていく。
そう、来週の土曜日……なんだよね……どうしよう。
俯いたまま歩いていた私は心配そうに振り向いた琥珀色の瞳に気づいていなかった。


***


翌朝。
結局昨日は満足に眠れなかった。
大会の日は本当は20日だったはずだ。何度も何度も確認したのだから間違いない。
それなのに……会場の都合だなんてそりゃないよ、と思う。
とにかく、19日に重なってしまった大会とライブ。私はどちらかを選ばなければならない。
朝食を食べながら机に昨日もらった大会要項と、スマホを並べる。
スマホはライブの詳細を伝えてくる。
どちらかを選ぶなんてできない。でも、どちらも選ぶことはできない……。
と、そのとき、頭の中を何かがかすめていった。何に引っかかったんだろう、と再度、要項とスマホを凝視する。

スマホは19日11時ライブスタート、と表示している。
……水泳の大会は19日13時高飛び込みの競技開始。

2時間のズレ。

「これしかない!」

どちらも選べない私はどちらも選ぶという選択肢に飛びついてしまったのだった。


***


大会の準備に、ライブの練習に、衣装づくりに。あわただしい日々はどんどんと過ぎていく。
過ぎていけばいくほど、私の中に焦りがミルフィーユみたいに重なっていく。
大会の準備をするから、ライブの練習がおろそかになってステップが上手く覚えられない。
……鞠莉ちゃんには「曜! もっと集中しなきゃダメでーす!」なんて言われてしまった。
ステップが上手く覚えられないから千歌ちゃんとのダブルセンターもうまくいかない。
……千歌ちゃんに「ごめんね、曜ちゃん、私が悪いんだ!」と気遣われてしまった。
せめて衣装だけはと思うのだけれど、針が上手く進まず、今日なんて指を刺してしまった。
……果南ちゃんに「曜。今日は帰りな」とまで言われてしまった……。

「時間、ないのにな……」

ベランダで、左手に暗い海を眺めながら独り言。だけど海は応えてくれない。
静かなさざ波が聞こえてくるだけ。
小さいころから海は私の支えだった。
悩みができてはベランダに出て、海を眺めているだけで考えがまとまったりしたものだ。
なのに、最近は……なんでだろう、それだけじゃ解決できないことも多くなってきた。

「あー……」

深くため息をつくと、スマホの画面をスライドして起動する。
表示されたのはライブの詳細。
もう、本番まで1週間しかない。
焦ってばかりで、何も決められていない。

「どうしよう……」

手すりにもたれてぐったりしていると、手に振動。スマホが電話がかかってきていることを告げている。

「誰だろう、こんな時間に」

時刻は23時を過ぎている。
画面を見て、どきりとする。
桜内梨子。
かわいらしい彼女の写真が表示されている。
1コール、2コール、3コール……逡巡した挙句、私は7コール目で電話を取った。

「も、もしもし……」

恐る恐る、応じてみると、通話口からほっとした空気が伝わってきた。

『ごめん、曜ちゃん、寝てた?』
「ううん、まだ! 大丈夫だよ。でも、この時間に電話って珍しいね、どうしたの?」

努めて明るい声を出すと、梨子ちゃんの声が暗くなるのが分かった。

『ねえ、曜ちゃん。何かあった?』

心臓がきゅっと縮まる。核心をいきなりつくのではなく、あくまで、私の言葉を待つのは梨子ちゃんらしいかもしれない。

「何か、って」

辛うじて声を絞り出したけれど、絞り出した時点で私はわかってしまった。今日の電話の意図を。

『言いたくなかったらごめんね。でも、何か隠しているよね?』
「……」

この沈黙は肯定と同じだ。嘘も、ごまかしも、私は苦手だ。

「どうして」

気づいたの? なんて愚問をなげかけてしまった。
それでも梨子ちゃんは私の問いかけには答えなかった。

『良かったら、私に話してみない?』

曜ちゃんの力になりたいの、と言われたのが引き金だった。涙腺が緩む。でも、必死にこらえる。
泣いちゃ、だめ。

どうして、梨子ちゃんは私が隠している弱さに気づいてしまうんだろう。
どうして、それを優しく暴いてしまうのだろう。
どうして、自分はそれが救いのように見えてしまうのだろう。

「あの、ね」

ほら、こうして隠したかったはずのことをぽろぽろと。

「何もかも、中途半端なの」
『うん』

肯定の「うん」じゃない、あやすように先を促す「うん」に続きを話してしまう。

「本当は、水泳も、ライブも、衣装づくりも、全部に全力投球したいの」
『うん』
「だけど、私……不器用で。不器用なのに、欲張って全部を取ったら、全部全部が中途半端になっちゃったの」
『うん』
「どうしたらいいのか、分からなくなっちゃった」
『うん』
「……」

支離滅裂な私の説明に応える声に包まれているようだった。
たっぷりと沈黙が下りた後、梨子ちゃんが話し始める。

『あの時の、私みたいだね』
「あの時……」
『そう、あの時』

梨子ちゃんが言いたいことはすぐに分かった。
ピアノのコンクールに出るために、東京に行くと決めた時。
あの時の梨子ちゃんはちゃんとスクールアイドルを選んでいた。中途半端な今の私とは違うじゃない。
と、自分の中に情けなさが渦巻く。

『曜ちゃん、今度は私の番だよ』
「え?」
『今度は、私が曜ちゃんの力になる』
「……っ」

もう我慢なんてできなかった。きっと涙声になっていたから梨子ちゃんは気づいていたと思うけれど、最後の引き金も梨子ちゃんが引いたんだ。
落ちる涙を眼鏡のフレームが受け止める。
でも嗚咽だけは伝えたくなくてうっうっと、変な声が出てしまう。
落ち着くまで待ってくれた梨子ちゃんに私は事情をすべて打ち明けた。

『本当はね、千歌ちゃんも電話したいって言ってたんだよ』
「そう、なの?」
『でもね、私が電話したいって言い張っちゃった』

電話先で、ぺろ、と舌を出している彼女の様子が目に浮かんで私は思わず顔を赤くした。
千歌ちゃんも気にかけてくれてたんだ、ってうれしい気持ちもあるし、
梨子ちゃんが「自分が」って言ってくれたこともうれしかった。
少し、うぬぼれてしまいそうなくらい。
良かった、電話で。今の顔は見られたくない。心配して電話してくれてるのに申し訳ないし。

『曜ちゃん。私は、曜ちゃんの高飛び込みを見たことないし、高飛び込みの曜ちゃんを見たことがないから、こんなこと言う資格はないのかもしれない。
だから、電話する前に千歌ちゃんに聞いたの。何か、伝えておいた方がいいことはある?って』
「うん」
『そしたら千歌ちゃんね、私のわがままに囚われたらだめだよって』
「……」
『絶対、曜ちゃんと一緒にスクールアイドルやりとげるんだってそういうわがまま』
「……」
『曜ちゃんがいっぱいいっぱいになってるのに、気づけなくてごめんねって』
「……そんなの、私が……っ」

私が勝手に選んだだけ、ううん、選べなかっただけなのに。
わがままだなんて、思ってない。でも、千歌ちゃんはそれでも自分の気持ちを「わがまま」と表現するんだろう。
千歌ちゃん、ごめん、ごめんね。

『きっと、曜ちゃんのことだからごめん千歌ちゃんって今、思ってるでしょ?』
「……な、なんで……」
『わかるよ』
「……」
『曜ちゃん。曜ちゃんに罪悪感もってほしくて電話したわけじゃないんだから』

ちょっと間が空く。ふふっと笑う声。

「……?」
『ああ、ごめんごめん。ちょっとだけ罪悪感もってほしいかも、なんていじわるなこと思っちゃった』
「え」
『私たちを頼ってくれないのかなって、ちょっと私としては拗ねちゃった部分もあるから』
「……あ」
『いいんだよ、曜ちゃん、私たちを頼って。無理かもってときは弱音を吐いて』
「……うん」
『曜ちゃんって器用だって言われるでしょ』
「ちょ、ちょっとだけ」
『でも、さっき言ってたみたいに、本当は不器用なのにって思ってるでしょ』
「え、なんでそれを」
『大丈夫、任せて。言ったでしょ、今度は私が曜ちゃんを助ける番だって』

また、ふふ、って笑う気配がする。
不器用だからこそ輝く曜ちゃんが大好きだから、って殺し文句みたいな言葉を最後に電話は切られた。


***


私はみんなに事情を説明した。
水泳の大会が変更になって、ライブと被ってしまったこと。
どちらも頑張りたくてやってきたけれど、すべてに全力投球するのは難しいだろうこと。
そして、大会に集中するために次のライブは欠席すること。

千歌ちゃんは静かなほほえみをたたえて聞いていた。
みんなも、分かったような顔をして聞いてくれるものだから、私としては話しにくくて仕方がない。
隣に立つ梨子ちゃんはそっと左手を握ってくれていた。

代役は、梨子ちゃん。
「次の機会には9人全員で」を合言葉に、それぞれの場所での奮闘が始まった。
衣装づくりだけはしっかりやろうとライブ3日前に何とか完成させるとみんなは嬉しそうに袖を通してくれた。
作ってしまった9着目にそっと手を這わせる。次こそは、これを着てみんなと。
想いを新たにして、そっと部室のロッカーにしまおうとしたら扉を持つ手を止められた。

「千歌ちゃん……」
「曜ちゃん! それ着て写真撮ろう!」
「え」
「ね、みんなもいいでしょ!」

否を唱える声など上がろうはずもなく、みんなで撮った写真はいつの間にか私のスマホの待ち受けにされてしまっていた。


***


わーっと歓声が上がる。耳慣れたはずの喧騒なのに、私はどうにも緊張しているらしい。
私よりも3人、前の選手が飛び込んだところだった。
あと、2人。
シュシュをつけて高飛び込みをするわけにはいかないから、待機スペースでシュシュを握りしめる。

―千歌ちゃん、梨子ちゃん、みんな、力を貸してね。

スマホを手に取ると、待ち受け画面でみんなが笑ってる。

―ライブ、うまくいったかな。きっと、うまくいったよね。今度は……私の番だ。

選手が飛び込む。あと、1人。

「浦の星女学院、渡辺選手」

呼び出しの係の生徒が声をかけてきたので「はい」と返事をして歩き出す。
直前の選手は、少し失敗してしまったみたいだった。思い描いた以上にどぼん、と着水の音がしてしまっていたのでわかる。

ふう、と深呼吸をして飛び込み台の階段を一歩、一歩踏みしめながら上っていく。
普段なら上るごとに研ぎ澄まされていくはずの気持ちが、乱れている。だめだ。集中しないと。
のぼりきったとき、客席を見てしまうのはいつもの願掛けだった。
私から見て左側の最前列。そこにいるはずの人が、今はいない。当たり前なのに……どうして見ちゃったのバカ曜。
ぐにゃり、と足元が揺れているようだ。どうよう、してるんだわたし。

―あ。まずい。

足がすくむ。何度も何度も、今までやってきたことなのに。
怖い。どうしよう。
息をゆっくり吐きだすけれど、だめだ。
早く、飛び込まないと。でも。

ぎゅう、と目を閉じたその時だった。
バタバタバタ、と数人の足音が響く。競技開始に合わせて静粛にしようとしていた会場。
それでも残る人々のざわめきを気持ちよく切り裂いたその足音の方に目を向けてみると。

「曜ちゃーん!!!」

衣装もそのままに、会場出入り口から全力疾走してくる私の幼馴染。

「曜ちゃん、がんばれー!!」

いつもは出さない大声を上げてくれる梨子ちゃん。
それぞれ口々に私の名前を呼んでくれる。その姿に、視界がゆがみそうになった。
乱暴に腕で目元をぬぐうと、場内アナウンスが流れる。

「競技中です。お静かにお願いします」

近くにいた係員さんにも注意されているのが遠目にもわかって思わず笑ってしまった。
笑顔と同時に緊張もこぼれ出てしまって、私はもう一度、ふう、と息をはいた。
そして、手をあげる。準備、OKの合図。

私の精一杯。見ててね、みんな。

(fin.)
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