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2011.12.17 (Sat)

第七話『譲れないもの、守りたいもの』

おはようございます!
もうすぐコミケということもあって新刊チェックに余念がなかったりします(笑)。
今回は初めて企業も見に行こうかなと思っています。「屋上の百合霊さん」が面白そうで…。

あ、今日は『三度、空へ』ってストライクウィッチーズ三期を勝手に妄想して作ったシリーズより第7話です。
第1話~第6話はこちら↓

第1話 三度、空へ 前編
第2話 三度、空へ 後編
第3話 兆
第4話 お願いだから
第5話 継がれる想い
第6話 塔

今回の話はシャーゲルがメインです。
舞台は扶桑からカールスラントに移り、カールスラントのとあるキャラクターが出てきます。
続きからどうぞ!
【More・・・】


第七話  譲れないもの、守りたいもの

ゴウン、ゴウン。
無機質な機械音がひっきりなしに鳴っている。
この機械音を聞くのも今日で一週間になる。いくら機械好きな私でもこうもずっと空の上ではどうにも心が落ち着かなかった。
私たち第501統合戦闘航空団が扶桑戦線の決戦存在を倒してからここに至るまではあっという間だったように思う。


***


扶桑戦線が解消されて、基地に帰りついた私たちは身も心もボロボロだった。決戦が激しかったこともある。だけど一番きつかったのはやはり、ミーナ中佐という存在感あるウィッチが……上がりを迎えてしまったことだった。
私は、ミーナ中佐を抱えて基地へと帰りつくと、すぐに医務室へと向かった。一縷の望みをかけて。

「シャーリーさん、私は大丈夫だから……」

そんな弱弱しい抗議に耳を傾けるほど、私も無垢ではない。医務室に辿り着くと、私はそこで待っていた老婆に驚いた。
見たことがない人だ。だけど、誰かを想沸させる。誰だ?

「ミーナ中佐……」
「……秋元先生」

ミーナ中佐とは顔見知りのようだ。訝しんでいる私の様子に気づいたのだろう。

「私は、こちらでお世話になっている宮藤芳佳の祖母だよ」
「宮藤、の……」

そして思い出す。そういえばあいつの実家は医者をやっていたと。ならば、医務室にいることも不思議ではないのだが、やはりそれでも、一般人がここにいることに合点がいかない。
私はそっと医務室のベッドにミーナ中佐を横たわせる。

「ちょっとごめんなさいよ」

宮藤のおばあちゃん―秋元芳子、という名前だそうだ―はそっとミーナ中佐の首筋に手を当てたり、お腹のあたりを触ったりし始めた。触診……それで分かるものなのだろうか。
私は、ベッド脇に用意されたパイプ椅子にくず折れるようにして座りこんだ。背もたれのないそれでは疲弊しきった体にきつかったけれど、壁を背もたれにしてなんとか姿勢を保つ。
一通り、触診が終わったのだろう。芳子さんはそっとミーナ中佐の体から離れた。その表情は、あまり芳しい報告をしてくれそうな顔ではない。

「それで、中佐は……」

私の言葉に、芳子さんが答えようとしたその時だった。

「……芳子さん」

先ほどまでこの部屋にはいなかった四人目の声がした。

「ハルトマン中尉」

芳子さんはハルトマンのことも知っていたようだ。

「……ミーナは」
「……自分の体のことは、自分が一番よく分かっているわ」

ミーナ中佐はハルトマンの言葉を遮るように静かに言いながら、体を起して、触診の為に前を開けていた軍服を正した。
そして、ハルトマンに向き直る。

「ミーナ……」
「フラウ……」
「だから……だから、言ったじゃん……」

ハルトマンの表情は沈痛なものだった。

「ごめんなさい」
「……」

ハルトマンが泣きそうな顔をしている。ハルトマンはあの夜、私にお願いをした。共に飛べない自分の代わりにミーナ中佐を守ってくれ、と。そして同時にミーナ中佐が飛べる期限は迫っているのだと。
私はただ黙って二人のやり取りを、聞く。

「こんなことを言うのも虫がいい話なのかもしれないけれど」
「……」
「カールスラントを、お願い」

ミーナ中佐がまっすぐにハルトマンを見た。

「当たり前だよ……任せてよ」

ハルトマンもまた、まっすぐにミーナ中佐を見ていた。

それから時間を空けずに、坂本少佐からもたらされた知らせは、第501統合戦闘航空団にカールスラントへの転戦を命じるものだった。


***


回想を終え、私は改めて機内を見渡す。
扶桑を解放できたというのに、メンバーの表情はいまいち浮かない。
ミーナ中佐は軍隊を辞めるつもりはなく、隊長として501に留まると言ってくれたけれど、戦闘に関してはいかんともし難い。
バルクホルンと私が事実上の戦闘隊長を分担する形となる。だけど、と私はバルクホルンを盗み見た。
黙し、瞼を閉じて腕を組んで座っているその様子からは何も読み取ることができないが、戦友であり、「年が近い」ミーナ中佐の離脱はかなり堪えているのではないだろうか。
どちらにしても。
501の戦闘可能メンバーはミーナ中佐が抜けてハルトマンが戻ってくることになる。総勢十名。悪くない構成人数だろう。
だけど、もう一人いてくれればよりローテーションを組めていいのだが。
そんなことを考えていると、機体が徐々に下降し始めた。
着陸態勢に入ったようだ。
久しぶりの欧州。カールスラントはもう間もなくのようだった。



「長旅、お疲れ様です、第501統合戦闘航空団の皆様!」

私たちを迎えてくれたのはどうにもハイテンションというかガッチガチに軍人然とした女の子だった。年のころは宮藤たちと同じくらいだろうか。びしっとした敬礼に第一印象から真面目で堅そうな印象を受けた。カタブツその二ってわけだ。

「久しぶりね、ヘルマ曹長」
「覚えていていただき、光栄であります、ヴィルケ中佐!」
「出迎えご苦労、ヘルマ」
「もったいないお言葉です、バルクホルン大尉!」

ミーナ中佐とバルクホルンとも知り合いのようだ。それもそうか。あの軍服はカールスラントのものだ。

「皆様を案内するように仰せつかっています。こちらへどうぞ」

ヘルマの先導で招き入れられた場所は風呂場だった。てっきりすぐにでもミーティングが始まると思っていた私たちは拍子抜けする。

「ヘルマ曹長、これは……?」
「長旅でお疲れでしょうから、まずは羽を休めてください、とのことです」

ヘルマは少し困った様子でバルクホルンに答えた。
なるほど、ヘルマの上官は話の分かる人物らしい。この配慮は素直に嬉しい。

「やったー! おっふろー!」

などと叫んでもう脱ぎ始めているのはルッキーニだ。

「あ、ルッキーニちゃん、だめだよまだ!」
「ま、待って」
「こら、あなたたち!」

宮藤とリーネとペリーヌがルッキーニをたしなめる。機内で淀んでいた空気が少し動き出した気がして、風呂の力も去ることながら、年少組のパワフルさに舌を巻く。ルッキーニが楽しそうにしているのを見て、私もふっと笑みがこぼれた。

「湯船がある……しかも檜だと……曹長の上官とは私も話が合いそうだな」

とは、坂本少佐の声。
浴室を覗いてみれば、扶桑でも見た、木の浴槽があった。若々しい木のにおいが鼻腔を刺激する。

「ここはお言葉に甘えちゃいましょう」

ミーナ中佐の言葉に誰もが嬉しそうな顔をした。体を洗ってリフレッシュしたい、それはまさにその通りだったからだ。
501結成当初は嫌われていたという扶桑の風呂文化だが、今はもう、隊の習慣の一つであり、欠かせないものになっていた。
いそいそと着ていたものを脱ぎ始めた面々を見つつ、さて私はどうするかな、と視線を巡らす。
このまま入ってもいいのだけれど、どうやらミーナ中佐と坂本少佐、それにバルクホルンは入らないでそのままヘルマの上官に会いに行くようだ。
ご案内します、というヘルマの提案を断り、ミーナ中佐は脱衣所を出て行こうとする。私も行っておこう、そう思ってその集団に加わろうとした時だった。

「お前はここに残ってくれ」

バルクホルンが私に向かって言った。

「え?」
「報告は後でする。ここに残るメンバーの監督を頼む」
「あ、あぁ。そういうことか。オーケイ、分かった。後で報告よろしく」

私は拍子抜けしてそのままバルクホルンたちを見送る。
そして、私しかいなくなった脱衣所を見て、ふう、とため息をついたのだった。


***


「それで、ヘルマちゃんはジェットストライカーの試験部隊に属しているんだね」

湯船につかりながら、宮藤がヘルマに話しかけている。ヘルマも結局、宮藤たちに押し切られる形で風呂に入っていた。
ヘルマがミーナ中佐たちと知り合いだったことも手伝って、宮藤やルッキーニといった好奇心旺盛な面々は風呂に入りながらヘルマを質問攻めにしている。

「そうです」

対して、ヘルマのほうはガッチガチに固まっている。
それも当然か。初対面のやつらと急に一緒にお風呂とあっては緊張するなという方が無茶というものだった。

「へえ、ジェットストライカーか。前にバルクホルンが履いたときはまだ完成してなかったみたいだけど……試験部隊ができるまで完成してきたのか」

私はシャワーで頭を洗う手を止めて、先ほどの会話で興味をもったことについて聞いてみた。

「はい。バルクホルン大尉が履いてくださったおかげで完成は早まったといえます!」

先ほどまでの萎縮振りはどこへやら。ヘルマ曹長はあまりない胸を張って見せた。
誇らしげなその様子に、ああ、バルクホルンのことが大好きなんだな、なんて思う。

「それじゃぁ、実際に飛ぶのを見るのが楽しみだ」

ヘルマがこの基地にいるのであれば、見る機会はあるだろう。
ロマーニャにいたときにあれだけバルクホルンや私を振り回したあのジェットストライカーがどんな進化を遂げたのか。速度はどれだけ出るのか。想像しただけでわくわくしてしまった。

「はーい! じゃぁ次は私の番ね!」

ルッキーニが「はい! はい!」と手を挙げる。ヘルマはその度、困ったような顔をしながら、しかし生真面目でどこか楽しそうに回答していた。

風呂を上がると、ヘルマの案内でミーティングルームに移動した。
そこには既にミーナ中佐たちが待っていて、ミーナ中佐と坂本少佐以外は思い思いに席に着席する。ヘルマは案内の任を終えたということなのか、姿が見えなかった。
学校の教室のようなその間取りに、私はブリタニアのミーティングルームを思い出した。

「みなさん、長旅の疲れは癒せたかしら」

そんな言葉からミーナ中佐の報告は始まった。
これからはカールスラントの最前線であるこの基地を使用して戦うということ。
正式にバルクホルンと私が戦闘隊長として任命されたこと。
そして。

「最後に、新たにこの第501統合戦闘航空団に加わってもらう隊員を紹介するわ。入って」

ミーナ中佐は近くの扉の向こうにいる人物に声をかけた。
几帳面な人物らしく、「失礼します」という声のあと、ゆっくりとドアノブが捻られその人物は入ってきた。

「ヘルマ……ちゃん?」

宮藤が驚きをあらわにした。私はうすうす気付いていたので表情には出さずにヘルマとミーナ中佐を見つめる。

「ヘルマ・レンナルツ曹長。みんなもう、知ってるわね」

茶目っ気たっぷりにミーナ中佐が微笑む。

「ヘルマ・レンナルツです。若輩者ではありますが、かの第501統合戦闘航空団の一員として皆様と共に戦えることを夢見ておりました! 至らないところもあるかと思いますが、よろしくお願い致します!」

そう言って、ヘルマは敬礼をして見せた。初めて見たときと同じ、綺麗な敬礼だ。
ふとバルクホルンを見れば、うんうん、と頷いている。
さっきの風呂の会話を聞いていても、ヘルマは「憧れのウィッチはバルクホルン大尉」だといって憚らなかったし、バルクホルンが二人に増えたような心地がした。
ハルトマンの苦笑いがすべてを物語っていて、私はそれでもくすりと笑ってしまった。


***


最初の一週間、ヘルマは「憧れの501」に入れたということもあってか非常に緊張した様子で日々を送っていた。どう接したらいいのか分からなかったのか、他の隊員とも距離を置いて遠慮していたようだ。だけど、その一週間を過ぎてからというもの、緊張が解けたのかそれらの行動ががらりと変わった。
朝。私の部屋まで来て、起床の時間だと起きるまでノックをし続け。
日中。訓練をサボろうとすればそれが上官であろうとも説教をした(ちなみに、私の名誉のために言っておくが、サボろうとしたのは私ではない。例のごとくルッキーニだ。少しは大人になったかと思ったが、そう人間急に大人になれるものでもないようだ)。
最初の一週間とは違う種類のガッチガチなその姿に若干の心配もしたけれど、それは彼女の目指すバルクホルンの行動と一致している。
そうして、カールスラントに着いてから十日が過ぎた頃だった。
私は胸騒ぎに襲われて起床時間よりも早い時間に目を覚ました。
ざわり。この、感じは。
飛行機に揺られること一週間、ここに来てから十日間。来ていなかったものだ。

ウゥゥゥゥゥ!

ブリタニアの基地と同じような音のサイレンが基地を揺るがす。そろそろ、来る頃だと思っていた。
私は胸騒ぎが的中したことに舌打ちをしながら、椅子にかけていた上着を羽織って部屋を出た。同室のルッキーニは例によって部屋では寝ない。
廊下に出ると格納庫へと走るバルクホルンとハルトマンの背中があった。さすがはエース。起き抜けのハルトマンがあそこまで機敏に動いているのは同室のバルクホルンが起こしたのか、それともやはり久しぶりの戦闘だからか。
隣のこの基地で一番大きな部屋からは宮藤とリーネ、ペリーヌ、そしてヘルマが出てきた。寝ぼけ眼のやつはいない。頼もしいことだ。
私も後れてはいられない、と、格納庫に向けて走り出した。

ビュン、と風を切って空を裂くようにして私たちはネウロイが現れたポイントに向かっていた。
いつもと違うのはミーナ中佐がいないことと……隊列から甲高い音がすること。レシプロのエンジン音よりも高いそれはヘルマの足元から鳴っていた。
ジェットストライカーユニット。
赤いその機体はヘルマを前へ前へと押し進める。
ヘルマはヘルマで慣れたもので、レシプロである私たちの進度に合わせるようにしてその速度を調整していた。
その軌道だけで実験部隊の一員としてのヘルマの実力を推し量ることができた。

「もうすぐだ」

バルクホルンの短い言葉に全員が持っていた武器を構え直す。今回の出撃メンバーはバルクホルン・ハルトマン、宮藤・ヘルマ、エイラ・私の六名だ。
本来であればあともう一ロッテほどは欲しいところなのだが、贅沢を言うことはできない。それに、今回のネウロイは偵察機のようで、小型のネウロイが二、三体との報告だ。

「敵機発見! 各自散開、各個撃破するように!」

バルクホルンの声に、全員が散開する。ネウロイは三体いた。どれも見たことのある型だ。
元々、バルクホルンは少佐レベルの指揮能力を持っているのだそうだ、指揮も板についている。あとはあの堅ささえなければ。もっと肩の力を上手い具合に抜かないといつか爆発してしまいそうだ。などと、ネウロイの熱線を避けながら考えるのはそんなこと。
私も別に油断しているわけではないが、ロッテを組んでいるやつがやつだ。

「シャーリー。上」
「あいよ」

的確な指示の下、私は熱線を避けつつ、ネウロイに接近すると、銃弾をその黒いボディに叩き込む。すぐに露出したコアに再度銃弾を浴びせると、ネウロイは粉々に砕け散った。
歯ごたえのない。
エイラも同様なのだろうか、つまらなさそうな表情で構えていた銃を下げた。
いや、こいつはこの戦闘が始まってからというもの……いや、扶桑をあとにしたあたりからずっとこんな仏頂面でいる。何か不満でもあるのだろうか。

周りを見渡せば、どのロッテも同じように楽勝ムードを漂わせている。
特に目を引くのは宮藤・ヘルマのロッテ。
てっきりヘルマのジェットストライカーで一発で決めるかと思っていたのだが、戦闘経験の違いだろうか、ジェットストライカーを上手く回頭できないヘルマの分まで、宮藤が動いて、すんでのところでシールドを張ってヘルマを守っている。
ヘルマもそれに甘えることなく、回頭しにくいという難点をスピードでカバーするように動いて、ネウロイに接敵している。
そう時間をかけず、撃墜することができるだろう。
しかし、この光景を坂本少佐が見たらどういうだろうか。
ヘルマは階級こそ宮藤と一緒で、かつ先任ではあるけれど、年齢はわずかに下だ。

「いつか後輩を教えて飛ぶ宮藤を見てみたい」なんて、語っていた少佐なら。

ふと胸の奥が熱くなる。まるで坂本少佐の気持ちが自分の中に伝播してきたようだった。

私は続いてバルクホルンとハルトマンの組を見る。
ウルトラエースを二人も出す必要はなかったようだ。すぐにでもネウロイを落としそうなその勢いに、とりあえず今日の戦闘はこんなものか、などと思った、そのときだった。

「うわっ」

短い叫びと共に、何かが黒煙を上げる。バルクホルンの組ではない。
その黒煙の源は……ヘルマの履く、ジェットストライカーだった。ネウロイの攻撃を食らったわけではない。だけど、突然噴き出した黒煙にヘルマがバランスを崩す。

「ヘルマちゃん!」

それをフォローに入るのはロッテを組む、宮藤。
ネウロイの熱線を先ほどと同じように受け止めるけれど、ネウロイも死力を尽くし始めたのか、それとも、宮藤が消耗しているのか、シールドが取りこぼすように熱線が左右へ大きく分かれ、立て続けに宮藤とヘルマを襲おうとする。

「待ってろ、今行く!」

私が動こうとしたその時。金髪の髪が私の目の前を横切った。

「私に任せて」

金髪をたなびかせながらハルトマンがネウロイに向き合う。
ハルトマンがこっちに来ているということは。
ばっと、私は上空を見上げる。そう、バルクホルンの方だ。ネウロイとタイマンを張ろうだなんて、あいつは何を考えているんだ。
以前みたいに、自分はどうでもいい、という投げやりな姿勢で戦闘隊長をやろうというなら私にだって考えがある。……と一瞬熱くなりかけたものの、あいつのことだ、きちんと状況を判断した上での決断だろう。あいつは、以前のあいつではないのだから、と自分を落ちつかせる。
私は宮藤たちの方のネウロイをハルトマンに任せ、ハルトマンの穴をふさぐ形でバルクホルンの方へ向かう。
しかし、私の動きが見えていたはずのバルクホルンは私が到着する前に攻撃を開始した。
素早い動きと、経験に裏打ちされた先読みの能力。それらをフルに活用してバルクホルンは熱線を避け続ける。二百メートルほどあったネウロイとバルクホルンの距離はあっという間に縮まり、そして。
バババババ! MG42が火を噴く。ネウロイの熱線もバルクホルンを襲おうとする。超近距離での撃ち合いだ。うまく熱線をバルクホルンのシールドが押さえ、逆にネウロイに叩き込まれたMG42の弾がネウロイのコアを破壊した。
同時に、私の背後でも破壊音がした。ハルトマンがネウロイを仕留めたのだ、というのは振り返らなくても分かることだし、今は振り返りたくなかった。目の前のバルクホルンから目を離したくなかった。
なぜなら。
ネウロイの最後の攻撃が、バルクホルンのシールドを破るようにして、バルクホルンの軍服の裾を焼いたのを、見てしまったからだ。

「……状況、クリア。これより基地へ帰投する」

バルクホルンも私の視線に気づいていたのだろう。私の視線を避けるようにして、バルクホルンが帰投の命令を下した。


***


基地に向かう途中も、基地に着いてからも、バルクホルンは私と目線を合わせようとしなかった。
あの場であの光景を見たのは、私だけだ。
こういうことに敏感そうなハルトマンは宮藤たちの援護に回っていたし、宮藤たちもそれどころではなかっただろう。
エイラ。エイラは分からないな、気付いていても、今のエイラでは何も言わなさそうだ。
食堂にはやって来たので食事を終えて席を立つあたりで捕まえようと思ったのだが、それもまた上手く逃げられてしまった。
どうにかして話をしたい。分かっているのか、自分の体の状況を、と。あいつが行きそうなところを片っ端から歩く。自室、格納庫、ミーティングルーム、ミーナ中佐の執務部屋。仕舞には風呂場まで探した。どうやったらこんなに綺麗に避ける事ができるのかと驚いたりもしたけれど、ここまで探し続ける私も大概だと思わなくもない。
もうすでに日は傾き始めていた。私は再度格納庫を見てみようと格納庫へと続く廊下を歩いている。
ガシャン、格納庫の扉を開くと、一箇所だけストライカーユニットの周りに明かりが灯されていた。最も壁際のハンガー。バルクホルンのストライカーユニットがあるところだ。
私はコツコツ、と自分の足音を聞きながら、歩をその明かりへと進める。
この格納庫は大きい。その大きさにもレンガ造りの無骨な雰囲気にも、カールスラントらしさがあふれていて、私は今まで見た格納庫の中でもここが一番好きだった。
明かりまでたどり着くと、ストライカーユニットを整備しているその人物を覗き込む。てっきり、明かりだけで本人はいないかとも思ったけれど、それは取り越し苦労だったようだ。

「よう」
「……何の用だ」

声をかけると、不機嫌そうな顔でバルクホルンは声だけで応えた。手元はストライカーユニットの部品を見つめたままだ。

「分かってるだろ、私の用なんて。だから戦いが終わってからこっち、私のこと、避けているんだろ」
「……」

バルクホルンは無言でもって肯定を表してしまった。

「……分かってるんだろ、自分の体のことなんだから」
「……うるさい」
「このことを知ったからにはあんな無茶な決断、今後絶対に認めないからな」
「何のことだ」

取り合わず、ただストライカーユニットの部品だけを見つめるバルクホルンの態度に、私は頭にきた。

「あのなぁ!」

立たせて、こっちを向かせようと肩に手をやると、バルクホルンは反射的にだろうか身をひねって避けた。そしてそのまま流れるような動きで立ち上がり、私の襟首を締め上げる。

「ぐ、ぅ」
「何に気付いたか知らないが……それは、絶対に黙っていろ」

カチン、と頭にきた。人がせっかく心配しているのに、なんて恩着せがましいことは言わない。だけど、昔の自暴自棄なあんたから少しは変わったかと思っていたのに、また命をなげうってでも戦いたいなんて言うとしたら説教の一つでもしたくなる。黙っていたら、あんたがまたさっきみたいに無茶をするんだろ? 分かってるよ。私もバルクホルンの胸倉をつかむとぎゅうと締め上げて壁にやつの背を叩き付けた。

「ぐっ」
「……わかった、いいよ。あんた、私の言う事、聞かないもんな」
「……」
「でもなぁ! ダメだと思ったら私は手を出すからな! いやだっていっても助けるからな! 助けられたくなかったら、意地でも落ちんな! 無茶な決断するな! 分かったか!」

渾身の力でもって、気持ちでもって、バルクホルンに叩きつける。
気付けば、頬に暖かいものが伝う感触がして、私はバルクホルンの胸倉をつかんでいた手を離すと、そのままバルクホルンに背中を向けた。

「けほっ……ごほっ」

解放されたバルクホルンは苦しそうに咳き込んだけれど、すぐに声を発する。

「おまえ、それ……ないているのか」
「……っ!」

本当に、デリカシーのないやつだ。そうだよ、泣いてるよ。自分じゃどうにもならないんだって分かって、悔しくて、悔しくて、泣いたんだよ。
でも、それを認めたくなくて、私は「知るか!」と叩きつけるように言うと格納庫を出て行こうとした。

「待て、シャーリー」

バルクホルンが立ち上がった気配がする。私は足を止めたけれど、振り向きはしない。なんとなく、しゃくだったからだ。振り向いて、泣き顔をさらすことが。

「なんだよ」

言葉だけで応える。バルクホルンがふっと笑った気配がした。

「すまない、心配かけて。大丈夫、無茶なことはしないさ」

近付いてくる。そして、ぽん、と頭を軽く叩かれる。まるで撫でるように。

「もしものときは、頼む」

そのまま格納庫の扉を歩いていくバルクホルンに私は「分かった」と短く答えた。
カールスラントのやつらはどうにも私に頼みごとをするのが好きなようだ。前回のミーナ中佐の時然り、今回のバルクホルンの時然り。

そんな自分の立場を損だとは思わない。むしろ、嬉しいとさえ思う。頼んでくるということはそれだけ信頼されているということだ。なぁ、それは誇ってもいいことだろう?
私は傍らにあるバルクホルンのストライカーユニットを一撫でした。

(to be continued…)

ちなみに、わたできで出した際にはこの話の挿絵はあまのさんが描いてくださいました。
最初の案ではシャーリーは泣かないはずだったのですが、文章を書いていく途中で「ここでシャーリーが泣いたら…」と思い始め、「シャーリーを泣かせてみたいのですが…」(このセリフだけ見たら怪しいですね(笑))と打診したら「ちょうどシャーリーのところ描いてました!」なんて返ってきたなんてエピソードがあったりします(笑)。その節はあまのさんすみませんでした!

話としては少年漫画のような展開になりました。
シャーリーとトゥルーデはケンカが多いけど、けっしてそれは相手が嫌いだからじゃなくて、どっちも大好きなんだろうな~信頼し合ってるんだろうな~だから無茶するのを放っておけないんだろうな~。なんて思って書いていたらこんな展開に(笑)。
少しでも気に入っていただければ嬉しいです。





まさきさん
コミック派と週刊誌派、みたいな感じでしょうかw 自分の文章でそんな風に言っていただけるとは嬉しいです。
リクについて了解致しました! 502の三人ですね。書いた事ない組み合わせなので上手く書けるか自信がありませんが(爆)、新しい組み合わせを書ける楽しさがありますw
シチュエーションも用意いただいたのでとてもありがたいです。時間がかかるかと思いますが気長に待っていただけたら嬉しいです。

コメントありがとうございました!


「三度、空へ」の番外編としてほのぼのとした日常話とかも見てみたい~の方
ありがとうございます! まさかそんな要望を頂けるとは思っていなかったのですごく嬉しいです。
そうですね、毎日戦闘しているわけではないですし、日常パートももう少し書きたかった…ので、今度書いてみます!
タイトルのことですが、本のタイトルに合わせて「三度、空へ」が正式です。ブログの項目が統一されてませんでしたね…直しました…!

コメントありがとうございました!
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