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2011.11.22 (Tue)

第六話『塔』

WL3お疲れさまでした。
今回はサークル参加にもかかわらず参加できなくて残念でした…次の機会には是非参加したいです。委託を受けて下さったさんぱちさんに改めて感謝です。

今日は『三度、空へ』ってシリーズより第六話です。第一話~第五話はこちら→(1話2話3話4話5話

ミーナさんの不調を巡ってシャーリーとトゥルーデがちょっとぎすぎすしたり、扶桑戦線が終結に向かっていったり…な話です。続きからどうぞ。
【More・・・】
第六話  塔

突如として現れたネウロイの巣とも言えるネウロイの塔。
魔法力を使い果たしていた501の面々は坂本の機転により陸軍に戦闘を任せ、一旦、戦域から離脱し、基地へと帰り着いたのだった。

「すぐに作戦を立てて先手を打つべきだ」
「いや、バルクホルン、ここは相手の出方を見よう。みんな疲れている。陸軍の連中もうまくやってくれている」
「しかし……!」
「落ち着け、バルクホルン」

焦りを募らせるバルクホルンに、あくまでも冷静な坂本。そして双方をたしなめるシャーリーという図が、ミーナの執務室で繰り広げられていた。
本来であれば坂本もバルクホルンと同じ意見なのだ。このままあれを放っておけば、ネウロイによって扶桑が陥落させられてしまうかもしれない。だから早く打って出てしまいたい。だけど、出撃するのは自分ではないし、それに、と、坂本はそっとこの部屋の主を見た。

「……」

ミーナは黙って執務机につき、顔の前で手を組んで目を閉じ、考え込んでいるように見える。
珍しいことだった。
ミーナが自分とバルクホルンがこうして意見をぶつけているというのに何も言わないなんてことは。

「……」

バルクホルンも思うところがあるのだろう。同様にミーナを見つめた。そんな視線に気づいたのか、ミーナは目を開いた。

「みんな疲れている、だけどあれを野放しにはしておけない。大丈夫、分かっているわ。本部に掛け合ってみるから」

そう言うと、ミーナは立ち上がり、部屋のドアノブに手をかけた。

「だから、この件は一旦保留とさせて」

そう言葉を残してぱたん、とドアを閉めて去っていってしまった。

「……」

残された坂本とバルクホルン、そしてシャーリーは目を合わせてミーナの違和感に首をかしげるのだった。


***


廊下に出て、ふぅ、とミーナはため息をついた。
戦局は一刻を争う。すぐにでも何かしらの手を打つべきだろう。だけど、すぐに本部に掛け合うのに躊躇したのには理由があった。隊長としてはあるまじき、ごくごく個人的な理由が。
そっと手のひらを見つめる。
先程の戦闘の時に感じた微かな脱力感。
最近、戦場に出ることが多くなって疲れでもたまっているのかとも思ったのだけれど、これはもしかして。ミーナは思い返す。もしかして、危惧していたことが起ころうとしているのだろうか。
自分が飛べる期限。
それはそう長くないと思っていたけれど、まさかこんなに早く。

「あ、ミーナ中佐!」
「……!」

突然かけられた声にミーナは身を震わせた。慌てて手を自然な位置へと戻す。

「あら、ルッキーニさん。休まなくていいの?」

隊員には先程の戦闘以降、体力回復に専念すべしと事実上の待機命令を出している。休むことが大好きなルッキーニはいの一番に寝ると思ったのだけれど。

「んー……なんか眠れないんだよね。だって、さっきのあれを倒せば、芳佳の国が解放されるんでしょ! じゃあ早く倒しちゃおうよ!」
「……!」

ルッキーニは当たり前のことをあっけらかんと語ってみせた。でしょ! と、胸を張る小さなからだに元気をもらった気がして、ミーナはそっと微笑んで、ルッキーニの頭を撫でた。

「にゃ、にゃあ!」

ミーナから頭を撫でられるという滅多にないことにルッキーニはどうしたらいいか分からずにされるがままになる。

「な、なに、ミーナ中佐」

撫でられから解放されるとルッキーニはミーナから距離を取って身構える。その必死さがおかしくて、ミーナは更に笑ってしまう。

「ありがとう、ルッキーニさん」
「え……? 私、何もしてないよ……?」

急な感謝にどぎまぎしながらルッキーニはそう返す。と、そのとき。

「おーい、ルッキーニちゃん、手伝ってよー!」

元気のいい声がルッキーニの背後から聞こえた。

「あ、うん、今いくー!」
「あの声は宮藤さん?」
「そうだよ! 今ね、芳佳とリーネとペリーヌと一緒におにぎりっていう扶桑料理作ってんの! またきっとすぐに出撃しないといけないだろうから、その前にみんなの元気が出るようにって!」

自分の待機命令は効果を出していないようだ、とミーナはそっとため息をついてしまった。そして同時にルッキーニたちのことを誇らしいと思った。何が今大事か、彼女たちは理屈じゃなく、肌で感じ、自ら考え、動いている。そこから自分が学ぶことは、多い。

「じゃあ、ミーナ中佐! 私、行くから!」
「ええ、お願いね」
「中佐、あんまり顔色よくないからおにぎりちゃんと食べるんだよ!」

わかったわ、と、ミーナはその背中に手を振る。そして、笑みから顔を引き締める。
私にはやるべきことがある、私にしかできないことがある。ルッキーニたちの気持ちに応えるのもまた、隊長である自分の役目だ。
そう覚悟を決めると、ミーナは再び、執務室へと足を向けた。


***


「ねぇ、誰、おにぎりにこの黒い変なグミ入れたの!」

ルッキーニがおにぎりの中身を指差して涙ぐみながら叫んでいる。

「あ、それ私が作ったんだ、うまいだろ。サルミアッキおにぎり」
「おいしいわけないでしょ! ううぇー……変な味……」

にこにこと挙手をしたエイラにルッキーニはすごく嫌そうな顔をした。いつものいたずらと違って厚意のつもりで入れているところがなお性質が悪い。

「あ、こら、ルッキーニ、出すのはだめだぞ」

口から出そうとするルッキーニにシャーリーが面白がって言う。しかし、その表情は次のおにぎりを口にした瞬間、苦悶の表情へと変わった。

「……誰だ、タコをおにぎりの中に入れたのは……怒らないから出ておいでよ」

シャーリーは本気で怒っているようだ、顔が笑っていない。
(る、ルッキーニちゃんだったよね)
(う、うん……)
小声で話すのは宮藤とリーネだ。
シャーリーの危険な空気をものともせずに「あ、シャーリー! 口から出したらだめなんでしょ、ちゃんとごっくんしなきゃ!」なんて言っているルッキーニのことを宮藤とリーネははらはらしながら見守った。

「全く、おにぎりも静かに食べられんのか」

それを横目にぷんぷんと肩を怒らせているのはバルクホルンだ。しかしその表情もまた次の瞬間にはすごい表情へと変わる。

「おにぎりに……バウムクーヘン……だと……」
「あ、トゥルーデに当たったんだ。おいしいでしょ、それ! 私が愛を込めて作ったんだヨ」
「ハールートーマーン! 貴様、料理だけは絶対にやるなと言っただろう!」
「えーだって、簡単そうだったし……」
「米にケーキが合わないのは分かりきっていることだろう!」
「そうかな、意外といけると思うよ」
「なら、食べてみろ……」
「やーだよー!」

そんな騒がしいやり取りを、ミーナは笑顔と共に静かに見つめていた。そして、折を見て、椅子から立ち上がり、口を開いた。

「みんな、そのままで聞いてちょうだい」

思い思いにおにぎりに手を伸ばし、具について笑い合っていた先ほどまでの雰囲気が一瞬にして引き締まる。全員、あのネウロイの塔のことを忘れていたわけではないのだ。
ミーナはぐるりとメンバーを見てから話し出した。

「司令部より入電がありました。先の戦闘でみんなが目にした巨大ネウロイは、やはり扶桑戦線における決戦存在であるという認識に立ったそうよ」

ミーナはそこで一息入れ、続ける。

「そして、我々501に改めて出撃要請がありました。明日の〇六〇〇をもって総攻撃をかけます」

しん、場が静まり返る。

「決まったんだな」

シャーリーの言葉にミーナは微笑んだ。

「決戦まで残り八時間。それぞれにしっかりと睡眠を取って決戦に臨むように」
「「了解!」」

声が重なる。全員の気合いは十分だ。隣に座っていた坂本は手にしたおにぎりを見つめながら
「三ヶ月という予測は間違いではなかったということか」
そんな風に感心しながら呟くと、
「まぁ、私が手を貸したんだ、当然だな!」
シャーリーが誇らしげに胸を張った。それを受けて、バルクホルンがダン、と机を叩く。

「それを解析したウルスラ・ハルトマン中尉の活躍も忘れてもらっては困る! なぁ、ハルトマン!」
「……」

またも始まりかけたやり取りだったが、その先はハルトマンの沈黙で持って断ち切られた。

「ハルトマン?」

バルクホルンの言葉が耳に入っていないかのようにエーリカは神妙な面持ちでミーナを見つめていた。その視線に気づいていないのか、

「ここは自由解散としますが、明日が決戦であることを忘れず、早めに寝るように」

ミーナはそう締めて、食堂を後にしたのだった。


***


カツン、カツン、ブーツが廊下の床を叩く音が鳴り響く。
私はいつも通りにやれていただろうか。そんな不安を抱きながら、ミーナは足を止め、廊下の途中にある大きな窓から外を眺めた。
満月が、こうこうと輝いている。使い魔が狼だからだろうか、落ち着かない気持ちにミーナはぶるり、と体を小さく震わせた。

「明日さえ、終われば」

そっと呟いた言葉に、
「明日さえ終われば……なんだっていうの?」
と、続けた人物がいた。
みんなは食堂にいて、この廊下には自分一人だったはずなのに?
振り向かなくてもその声で分かる。ずっとずっと、ストライカーユニットを並べて戦ってきた仲だ。
だけど、ミーナは振り返ることができなかった。背後にいる人物に誤魔化しは効かない。へたをすれば今の自分の気持ちがさらけ出されてしまう気がしから。
その人物は構わずミーナの横に並んだ。同じように窓越しの月を眺める。綺麗だね、なんて言葉をクッションのように使って。

「ねえ、ミーナ」

切り込んでくる。そのまとう空気は空にいるときと同じ空気だ。ミーナは身構えた。

「エーリカ……」
「はっきり、手短に言うよ。今回、ミーナは出撃すべきじゃない」

いつの間にかハルトマンはミーナのことをまっすぐに見ていた。
普段はのほほんとしているのに、今の鋭いその眼は、ハルトマンが真剣であることを表している。
以前、ハルトマンは一緒に出撃するベテランウィッチの異変を感じて「飛ばないほうがいい」と進言したという逸話を思い出した。進言を聞かずに出撃したそのウィッチは一命を取り留めたものの、撃墜されて、ひどいけがを負ったそうだ。そしてそのエピソードに沿って考えていくと、ハルトマンが言わんとしていることがミーナには分かってしまった。
だけど、その進言は。

「何を言っているの……今回は決戦。全戦力で当たれというのが上からの命令よ」

受け入れられるわけがない。自分は、この501の隊長なのだから。その言葉を聞いてなお、ハルトマンはまっすぐにミーナを見つめる。

「ミーナは自分を省みなさ過ぎる。その点はトゥルーデと一緒だね」
「あなただってそうじゃない」

先日の戦闘で無茶をしたハルトマンは苦笑いで返した。それはそれ、これはこれだよ、なんて言い訳ともつかないことを言いながら、また、真剣な眼に戻る。

「もう一回言うよ。飛んだらダメだ」

まっすぐな視線に、ミーナは瞳を閉じた。
戦友の見立ては正しい。今回のような大きな作戦では、自分の残り魔力では乗り切るのは難しいだろう。だけど、501の隊長としてここで頑張らなくていつ頑張るのだ。
坂本のこともある。彼女は、本当は自ら飛んで、自らこの国を守りたいはずだ。
国を守りたい。
その気持ちをミーナはずっと持って戦ってきた、だから、痛いほどに分かるのだ。
そして、瞳を開く。今度はまっすぐにハルトマンを見詰めた。

「ありがとう……ごめんね」
「……っ!」

本当に。本当にありがとう。
あなたが、私とトゥルーデに自分たちの手でカールスラントを解放してもらいたいんだって、そんな気持ちでがんばってくれているんだって私は気づいていた。
でも、気付いている上でこんな選択をする自分を許してほしい。
いや、許さなくてもいいから、あなたは気に病まないでほしい。
ただ単に、私がばかな選択をするだけなのだから。
ミーナはそんな気持ちを込めて、ハルトマンの肩をぽん、と叩くと、その場を後にした。


「……ミーナ……」

ハルトマンはミーナが去っていった廊下の先を見つめて、立ち尽くしていた。
ミーナの気持ちは分かるよ、でも、それじゃぁカールスラントはどうするのさ。
言えなかった。だけど、ミーナは自分の願いなど、わかっていただろう。その上で、戦うという選択をしたのだ。自分が止めることなど、できはしない。まして自分は、今は飛行禁止の命が出ているような健康状態なのだから。
せめて自分が飛べれば。近くで見守ることができるなら。
悔しさにハルトマンは唇をかみ締めると窓の外をもう一度見遣った。
ミーナは柔軟なようでいて、絶対に曲げたくないところは曲げない。そういうところはトゥルーデにそっくりだ、とハルトマンは目を伏せた。

「なんだ、落ち込んでいるのか? らしくないな」

突然の声。先ほどのミーナと同じように、びくり、とハルトマンは身を震わせた。そこに現れたのは。

「……シャーリー」
「ああ、悪い、邪魔したか?」

シャーリーはコーヒーを両手に一つずつ持って、廊下に立っていた。食堂からの廊下だ。誰か通っても不思議ではない。邪魔も何もないのだ。

「そんなことないよ」

許容の返答をすると、シャーリーはそのままエーリカの横に並んで立った。さっきのミーナが立っていた位置と、同じ位置だ。
ほら、と言って、シャーリーはハルトマンにコーヒーを渡す。
しっかり二つ分ある辺り、自分を慮って来てくれたのだと気付いてふっと心が暖かくなる。
シャーリーは暖かくて、広い。
バルクホルンと一緒にいるときとは違う居心地のよさがハルトマンは大好きだった。

「悩み事か?」

コーヒーに一口つけてシャーリーはぽつりと呟いた。

「悩み事というか……うん、悩み事かな。頑固な友達を持つとつらいね」

ハルトマンもコーヒーに口をつける。シャーリーの淹れるコーヒーはバルクホルンが淹れるそれよりも薄い。

「お前が言うかぁ? お前だって、絶対に曲げたくないところは曲げないじゃないか」

さっき自分が思っていたことを茶化したようにシャーリーに言い当てられてぐっと口をつぐむ。

「まぁ、私にできることがあれば言ってくれよ」

その言葉に、ハルトマンはばっと顔を上げた。
そうだ、私には何もできないけれど。だけど、このまま決戦を迎えるなんて嫌だ。なら、できるだけのことをして、決戦に臨みたいじゃないか。
ハルトマンは意を決したようにシャーリーに向き合った。

「じゃぁ、一つだけお願いできる?」
「いいよ、何でもいいなよ」

その真剣な口調にシャーリーも姿勢を正してそう答えたのだった。


***


出撃直前の格納庫に、バルクホルンは呼び出されていた。出撃は昨日、ミーナが言った通り、〇六○○より開始される。ちょうど、その出撃開始の十五分前だった。格納庫にはまだ自分以外の姿が見えない。しかしあと五分もすれば隊員たちが集まってくるだろう。
靴音が聞こえたのでそちらに眼を転じれば、ここに自分を呼び出した人物が歩いてきていた。

「ごめん、待たせたか」
「いいや、今来たところだ」

バルクホルンは軽く応じる。遅刻に目くじらを立てるはずのバルクホルンには珍しいことだが、そこで時間を取るほどの余裕はなかった。その余裕をなくさせたのは目の前にいる人物の必死さだった。
シャーリーが珍しく、余裕がない表情でここに呼び出したものだから、ただならぬことなのだろうとバルクホルンは聞く覚悟を決めていた。

「単刀直入に言う。バルクホルン……出撃前になんだが、今回の戦闘の事で頼みがあるんだ」
「……聞こう」

シャーリーが自分に頼みごと、しかも戦闘に関することときたものだから、バルクホルンは小さく驚きつつ、短く答えた。

「お前と私のポジショニングを代わってもらえないか」
「は……?」

予想外の申し出にバルクホルンは唖然とする。そして、少しだけ怒気をにじませながら答える。

「お前、戦闘開始十五分前だぞ。フォーメーションの変更など、作戦の成否に関わることじゃないか。それに、今回の戦いは雑魚との戦いではない、この扶桑の未来をかけた決戦なんだぞ。それを、お前は……」
「……」

シャーリーは無言でバルクホルンを見つめる。いまだかつて、この戦友のこんなに真剣な眼を見たことがなくて、バルクホルンは口を噤んだ。
そして、しばらくの沈黙の後、口を開いた。

「何か、考えがあるんだな」
「……ああ、そうだ」
「……わかった。代わろう」
「恩に着る」

シャーリーが頭を下げようとするのをバルクホルンは手で制した。

「らしくないぞ、リベリアン。お前は陽気でのん気でいるくらいがちょうどいい」

決戦前だというのにそんなことを言うバルクホルンこそ、らしくない。けれど、シャーリーは無言で頭を元の位置に戻した。



「準備は、できたわね」

ミーナはそう声をかけると隊員を見渡した。
どの顔も士気が高く、今にも空へと飛び出しそうである。頼もしさにミーナはふっと笑みをもらした。このメンバーで戦えることを誇りだとも思う。

「直前ではあるけれど、フォーメーションの変更がありました。トゥルーデとシャーリーさんがポジションを変更。ルッキーニさんとトゥルーデがロッテ組となるわ。いいわね、ルッキーニさん」
「……うん」

素直にうなずくのはルッキーニ。以前までであれば「やだやだ! シャーリーとがいい!」なんて駄々をこねていただろうが、人は成長していくものだ。と、感慨深くなってミーナは眼を細めた。しかし、それも一瞬だ。

「ストライクウィッチーズ、出撃します!」

力強いミーナの合図に全員が次々に空へと飛び上がる。
最後に離陸体制に入ったミーナは見送りに来ていたエーリカと坂本に微笑んで見せた。大丈夫、大丈夫だから。
そう眼で伝えると、ミーナは空高く飛び上がった。

ネウロイの塔のポイントまで移動すると、ミーナは各隊員に連絡を入れた。

『リーネさんと私はいけます』
『サーニャ、エイラ組もいけるぞ~』
『バルクホルン、ルッキーニ組も大丈夫だ』

次々と聞こえてくる、頼もしい声。ミーナはふっと微笑んだ。そして、告げる。

「『烈風(Ein gewaltsamer Wild)作戦』、開始!」
「「了解!」」

散開する隊員たち。
ミーナとシャーリー、そして宮藤を除く各ロッテはネウロイの塔へ猛進すると、次々に塔から出てくるネウロイを撃墜する。
それらを見下ろすような高い位置にミーナと宮藤は陣取っていた。
守るようにして前衛に入るのはシャーリーだ。
宮藤は、左腕を右手で押さえるようにして繰り広げられる戦闘を前にただここで待機するしかないもどかしさをこらえていた。
ミーナは三次元把握能力によって次々と的確な指示を飛ばす。それに従って戦況は刻一刻と移っていく。
インカムを通じて聞こえてくるのはネウロイを倒した歓喜だったり、奮闘する声だったり……一番、宮藤の耳を捉えて離さなかったのは。

「うあっ……」

ネウロイのビーム音。苦痛にゆがんだ声。ばっと、視線を巡らせると、堕ちていくストライカーユニットがあった。501の隊員ではない。この作戦に参加している扶桑陸軍のウィッチのようだった。
私の固有魔法は、こういうときのためにあるのに。
咄嗟に飛び出そうとする宮藤の様子を察してミーナは宮藤を制止するようにその眼を見つめた。

「宮藤さん、今は耐えて」
「……はい……」

宮藤は苦痛の表情を浮かべ、うなずいた。
シャーリーはその様子を横目に、宮藤とミーナに近づいてくるネウロイを次々とほふる。
ミーナは明らかに疲弊している。当然だ。あれだけ長時間にわたって固有魔法を発動し続けているのだから。

「早く……早く、しないと」

シャーリーは焦りを募らせる。
絶対に無事に連れて帰るとあいつと約束したのだから。

一方。

「ルッキーニ。大丈夫か」
「だい、じょうぶ、だよ」

答えるルッキーニは言葉とは逆に息も絶え絶えだ。

「すまない、飛ばしすぎたか」

一番機であるバルクホルンは自分のふがいなさを詫びる。
二番機は一番機の後を追うようにして飛行する。二番機の疲労は一番機の至らなさが原因だ。そう、思ってわびたつもりだった。

「謝らないでよ、バルクホルン。次はついていくからさ」

にこっとルッキーニが笑うのに、バルクホルンはふっと微笑んだ。こんな小さい体でも、心根はしっかりと軍人だということだ。
しかし。と、バルクホルンは頭上を見上げる。
そこに橙の髪を見つけると同時に太陽の光が眼に入ってバルクホルンは眼を細めた。
あいつなら、もっとうまくやるんだろう。
そう、思うと、同時に考えることは。
あいつがなぜ、自分とポジショニングを代わって欲しいと言い出したのかということ。
あえて、理由は聞かなかった。だけど、あいつをあそこまで本気にさせたのはなんだったのだろう。そして、なぜ、自分ではだめだったのだろう。
あそこのケッテの残り二人は、宮藤と、ミーナ。そのどちらかに不安があったということだろうか。
そこまで考えて、バルクホルンは頭を振った。
……やめよう。迷えば、余計な犠牲が出るかもしれない。
バルクホルンは息を整えているルッキーニを見やる。
少なくとも、今はあいつからルッキーニを任されているのだ。だから私は、あいつに宮藤とミーナを、任せる。

「行くぞ」
「おーう!」

バルクホルンの声にルッキーニが応じる。案じなくても、戦況は間もなく動く。烈風は間もなく吹くはずなのだから。


「サーニャ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。エイラは?」
「私はへっちゃらさー」

エイラはそう言いながら、MG42をぶっ放す。

「……そろそろ、合図が出るな」

エイラが顔を引き締める。

「うん……」

その言葉を待っていたかのように、青い閃光弾が上空に放たれた。作戦の二段階目。その鍵を握るのは。

「サーニャ」
「うん、行こう」

サーニャも緊張した面持ちでエイラに応じる。

「サーニャは絶対、私が守るから」

手を握られて、サーニャは微笑む。

「うん、信じてるから」

二人はぐん、とスピードを上げるとネウロイの塔の先端まで高度を上げながら迫った。


「うらあああああ!」

全開のシールドでサーニャを守りながら進むのはサーニャを連れたエイラだ。その周りをリーネやペリーヌが守るようにしてネウロイを退ける。
十分な高度、距離に達すると、エイラはサーニャの手を離した。

「サーニャ、頼む!」
「……っ!」

サーニャはフリーガーハマーの引き金を引く。
ウルスラによりさらにパワーアップしたフリーガーハマーは容赦なく、ネウロイの塔そのものに撃ち込まれる。けれど。

「やっぱり、効かない……」

様子を横目に見ていたリーネは呟く。

「元より、攻撃自体が目的ではないでしょう」

ペリーヌも応じる。そして、トネールをいつでも放てるように精神を集中し始めた。

「あとはお願い! 芳佳ちゃん!」

サーニャが叫び、見上げた先には。先ほどまでずっと待機命令を与えられていた宮藤がいた。

「任せて!」

太陽を背にして、振りかぶった扶桑刀を、まっすぐにネウロイの塔へと振り下ろす。
宮藤はネウロイの塔に扶桑刀が刺さったのを確認すると、さっと身を翻した。
銃による攻撃が効かないのなら、剣撃ではどうだ、という読みは悪くなかったようだ。魔法力を込めた一刺しの周りがバリン、とネウロイの黒い表層が壊れた。
その黒の下にあったのは。

「赤い……?」

宮藤の呟きに坂本が反応する。

『赤い、だと』

インカムを通して、坂本の動揺が伝わってくる。
そこにあったのは自分たちが見てきたコアとは大きさにおいて異なるものだった。このネウロイの塔そのものが、ネウロイのコア。そこにはどんな意味があるのだろうか。
しかし、それは今、考えるべきことではない。
宮藤はそう思い、バトンを渡す。この作戦の要に。

「最後、お願いします! ペリーヌさん!」
「……トネール!」

いっぱいに溜め込んだ電撃が放出され、あたりをまばゆく照らす。
その電撃は、宮藤が突き立てた扶桑刀を媒介として、ネウロイの塔全体を震わせる。
全力全開のトネールの光が徐々に弱まり、消えると、宮藤は閉じていた瞼を開いた。

「ペリーヌさん!」

宮藤の目に飛び込んできたのは力尽きて、ぐったりしているペリーヌをリーネが抱えている姿だった。
すぐに空を駆けてリーネに近付くと、宮藤はペリーヌの様子を伺う。

「そんなに大声を出さなくても、大丈夫ですわ」

ペリーヌは辛うじて意識を手放さなかったようだ。自立飛行は叶わないまでも、リーネにつかまる形でなんとか飛行を続けていた。
その様子にほっと息をつくと、リーネは静かに笑った。宮藤もまた、ペリーヌを支える形でフォローに入る。

「ネウロイは……」

近くまで来ていたバルクホルンの言葉にその場の全員がネウロイの塔を視認しようと視線を巡らす。そうだ、ネウロイの塔は。

「……私たちの、勝ちだね」

宮藤は呟く。降りしきるネウロイの破片が、自分たちの勝利を教えてくれていたからだ。ネウロイの姿はなく、刀だけが地面に突き刺さって残っていた。……強い刀だ。普通の刀であればこの雷撃で融けてしまっていただろう。
作戦の成功をみんなが認識した、その瞬間。

「ミーナ中佐!」

必死の叫びが聞こえた。シャーリーのものだ。
いつものんびりしている人の叫びだからこそ、緊急性を匂わせた。
宮藤たちがミーナの方を見たときには、白と緑のストライカーユニットが落ちていっていた。
続いて、落下していたのは。

「ミーナ中佐!」

宮藤も叫ぶ。
ミーナ中佐が堕ちていく。
何が起こったんだ?
ネウロイが残っていたのか?
しかし、先程の戦闘でネウロイの塔を壊した際に、塔の外にいたネウロイも消滅していたはずだ。
ならば、新手か。

「うぉぉぉぉぉ!」

シャーリーが急降下でミーナを抱き止めた。
意識は、ある。
だけど。

『ミーナは大丈夫か、宮藤!』

坂本の声がインカムを通して叩きつけられる。
宮藤は状況の変化に追い付けないまま、坂本に応じる。

「えっと、ミーナ中佐が……堕ちました」
『なに……っ?』
「あ、でもシャーリーさんが抱き止めました、命に別状はないと思います」
『……意識と……使い魔は?』

声が変わった。ハルトマンだ。

「意識はあります、使い魔は今、使役していないようですが……?」
『……わかった』

ハルトマンはそれきり話さない。
宮藤はインカムの向こう側の重い沈黙と、ミーナを抱えるシャーリーの悲痛な面持ちに何かが起こってしまったことだけは分かって、ごくり、と唾を飲み込んだのだった。


(to be continued...)

主戦場は次の話から違う国へと移ります。

感想ありましたらよろしくお願いします!





拍手返信です!

まさきさん
まずは返信が遅くなり申し訳ありません。そして感想ありがとうございます!
サクサク読めるというのはよかったです。そういえば目次にページ数入れれば良かったですね…(汗)。
リクについて2件どちらでも了解です、いつでもどうぞー!
モンハンの感想までありがとうございます!湯あたりにそんな意味があるとは知らなかったです。シャーリーもトゥルーデもイメージで武器を決めたのですが、エーリカだけは「アイルー」っていうオトモのネコみたいなやつにしてみました。モンハンやったことない方でも楽しんでいただけたならとても嬉しいです!!
コメントありがとうございました!


芳佳が軍人として成長したら~の方
設定資料集があるとはすごい、しかも芳佳二刀流とはかっこいいですね。
しかしまだまだとても見切れないです…。マイペースに読みます(汗)。すみません!
コメントありがとうございました!


BOTを紹介してくださった方
BOTもあるのですか、今ちょっと作品読む時間がないのでBOTだと分かりやすくていいかもですね。
教えて下さりありがとうございます。
コメントもありがとうございました。
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