2010.06.05 (Sat)

Angel Beats SS『your song』

Angel Beatsの岩沢×ひさ子のSS後編です。
先に1つ前の記事にある前編『my song』をお読みください。

今度はひさ子視点です。

3話を見返そうと思ったら見れない状況になってしまったのでしかたなく記憶に頼ってのSSです、多少変なところがあっても目をつぶってやってください><

続きからどうぞ!
【More・・・】



「あぁ、毎日が充実しているな、と思うことが最近あるんだ」

岩沢は思い出したように口を開いた。
廊下は夏の陽気を受けてむしむしとしている。
開け放した窓の近くに背中を預け、岩沢は手にしたペットボトルを口に運んだ。
タオルを巻いた首には滴る汗が見て取れる。
暑い。先ほどまで練習していた教室の中では関根と入江がじゃれあっているようだ。
岩沢の隣に座り込んでいた私は岩沢を見上げた。

「そんなこと言って、消えたりしないでくれよ?」

茶化すように言うと、岩沢は至極真面目な顔をして「まだ成仏する気はないけれど」と前置きを置いて

「もしものときは……あとを頼むね、ひさ子」
「いやだね」
「……」

岩沢の視線はここで初めて私と合った。
あえて私の目を避けるようにしていたのは、こいつらしくない。
いつも憂いをたたえた岩沢の瞳は、今日はもっと憂えているように見える。

初めて会った時からそうだった。
初めて会った岩沢は、屋上でギターを弾いていて、悲しそうにバラードを歌っていた。
その姿に胸を打たれて、私も音楽をしてみたい、と必死でギターを練習した。
少しでもあんたに追いつけるように、と。

だからいやだよ、そんなこといわないでくれ。
ユリたちにあのバラードを紹介したことも気になっていた。
ユリは絶対にあの曲を却下するだろう。
バラードでは、陽動になりにくい、と判断して。
それなのにあえてバラードを紹介したのは、なぜだ?

「……まだあんたとはやりたい音がたくさんあるんだ。消えてもらっちゃ困る」
「……そうだね」

岩沢は憂いの色を忍ばせて静かに頷いた。
岩沢の背中から差す夕日で、岩沢の姿はかすんで見えた。
思わず立ち上がり、その手を取ると、岩沢はどうした、といつもの調子で私に返す。
消えちゃうんじゃないかって、そんな不安を口にしたらこいつはどんな顔をするのだろう。

なんでもないよ、と言うものの、つかんだ手を離すことができない。
顔に手を滑らせて、自分の方を向かせる。
きょとん、としたこいつには似合わない顔に更に焦りを募らせる。
こつん、そのまま額を寄せて、気持ちを伝えたい衝動に駆られた。

なぁ、頼むよ、そんなこと言わないでくれ。
私は、あんたの音が……あんたの、ことが。

「ひさ子?」

私を見上げる岩沢に、我に返る。

「なんでもない、ごめん」

そう言って、岩沢の頬から手を離す。
その離した手が、もう二度と岩沢に触れることは出来ないんだって、このときの私には知る由もなかった。


***


その日の、夜。
いつものように作戦が実行されるけれど、私たちのすることはいつも決まっている。
一般生徒を、安全な場所にひきつけること。
天使をおびき出すこと。
理由づけなんてユリたちがすることだ。私たちはただ、歌っていた。

演奏している中で、岩沢の変調に気づく。
今日の岩沢は、調子がいい。
でも、どこかおかしいんだ。
なかなか人が入らないことへの焦りもあっただろうけれど、こんな序盤からAlchemyを弾き始めた岩沢に驚きつつも、Alchemyの歌詞の中で、私は確信する。

生きる残り時間、それを岩沢は感じ取ったっていうのか。
これが、あんたの……ラストライブだっていうのか。
私より前に出て歌う岩沢の表情は窺い知ることが出来ない。

あんた、今、どんな顔して歌ってる?
笑ってるのかな、泣いているのかな。
……きっと、心の中で笑って、泣いているんだよね。

歌うことが嬉しくて、気づけたことが嬉しくて、嬉しくて嬉しくて……泣いているんだよね。わかるよ、あんたの気持ち。

「ライブをやめろ!!」

教師連中がライブ開場へと飛び込んでくる。
いつもは止めないのに、今日に限ってどうして、と私は歯噛みする。
一旦、演奏を中止した私たちだったが、ステージ奥に置かれたギターに教師が近づこうとするのを岩沢はさえぎった。

「触るな……それに触るな!!」

普段は冷静すぎるくらいに冷静なはずのその表情に決意を感じ取って、私は教師を振り切って、体育館の2階にある放送室へと走る。

今の岩沢の曲を、少しでも多くの人へ。
聞いてほしい、岩沢の思いを。

……岩沢。
あんたの手が大好きだった。
あんたに触れるもの、全てが輝いていくように見えたんだ。
私も、あんたに触れて、輝けるかもしれないと思ったんだよ。
だから、ギターを持ってステージに立った。

あんたが満足するときは今だというのなら、私は、あんたが笑っていけるように、最大限、力になるよ。

放送室へと走りながら、視界は涙でにじんだ。

何でだろうね。こんな確信を持っているのは。
あんたのことをずっと見てきたから?
その背中を追ってきて、そして、その横に立つことを許されたから?
それでやっと、知ることが出来たんだ。

かちり、全校放送ができるように出力を変える。
光の中で、岩沢は歌う。
初めて会ったときと同じ曲を。
切ない、切ないバラードは岩沢からの最後のメッセージだ。

そして、岩沢は歌いながら私のいる放送室を見上げた。
泣きながら、笑ってる。ありがとう、そう言っているように見えた。
ありがとうを言うのは、こっちのほうだ、と私は無理やりに笑顔を見せた。

そして、ゆっくりと、岩沢が崩れ落ちる。
岩沢が、消えていく。

その光の残滓に、心の中で手を振る。
泣いている君こそ、孤独な君こそ、愛しかった。
最後まで伝えることができなかったこの気持ちは、私が消え行くまでずっと持ち続けるだろう。

(fin.)


岩沢とひさ子の間にこんな信頼関係があったらいいなぁ…なんて思って、妄想を形にしてみましたw
岩沢、結構好きだっただけに早い離脱で残念でした…。

感想ありましたら拍手までお願いします!



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