2009.04.19 (Sun)

エーゲルSS『だけど、ずっと心は隣に』

さて、ずっと先延ばしにしていたエーゲルSSの続きです。
もし。もしも。待ってくださった方がいたらお待たせしました><

初めて読む方はこのSSを読む前に

『その細い肩を』
『守れるのはこの力だけだと思っていた』

のSSを読んでくださると話がつながるかと思います。
このSSで一応完結です。

続きからどうぞ!
【More・・・】




ウゥゥー!
サイレンが響く。もう、幾度となく聞いてきた、やつらがやってきたことを知らせる音だ。
私にしてみれば、もう、サイレンは意味を成さない。
何故なら、やつらが来ることはその日の朝起きたときの空気の感じですでに分かるからだ。

来ないと分かれば今までの私ならぐうたらしていたところだが、最近では妙に目覚めがいい。
いや、「悪い」と言い換えた方がいいかもしれない。
私の朝は必ずと言っていいほど、あの時、落ちていくトゥルーデの手を握ることができなかった、そんな悪夢から始まるのだから。
今も、私は、悪夢の中だった。




『だけど、ずっと心は隣に』




「ハルトマン隊長、敵襲です」
「……知ってる。もう出られるよ」

部屋まで生真面目に迎えに来た後輩を一瞥する。
こいつはいつもそうだ。
イヤというほど見慣れた生真面目さを見せ付けて私にあの子のことを忘れさせない。

「そんな毎回迎えに来なくたってちゃんと起きていけるから大丈夫だよ、ヘルマ」
「いいえ、あなたが朝ちゃんと起きるかどうか、普段のあなたを見ていると心配ですから」

えっへんと胸を張って腰に手をやる姿まで真似なくてもいいというのに。
聞けば憧れのウィッチはトゥルーデだという。
あぁ、なるほどね、だから見たことがあるような気持ちにさせるのか。
どちらにせよ、まだまだ空戦技術は未熟で、だから私が守るべき僚機であることに違いはなかった。




うるさいくらいストライカーの音が響く。
ヘルマを始め、私の隊の隊員達がそこに集結し、戦いの準備をしていた。


―隊長、か―


思えばそれはミーナだったはずだ。
何故私がここにいる。隊長と呼ばれるんだ。

ミーナだけじゃない。
ここには居ないんだ、みんな。
シャーリーも、坂本少佐も、ミーナも、トゥルーデも…!
みんなみんないないんだ。


ガレージの轟音の中、それでも私の心は反して静かだった。
ずっと、ずっと。
心の中に冷たくてどろどろしたものが渦巻いていた。


「……ハルトマン、出る」


声をかけ、どろどろを振り落としたくていきなりトップスピードに入れる。
後ろにまだ準備していた隊員たちが取り残されるが、そんなこと知らない。
戦えば戦うほど、私はみんなに近づく。
それに、目の前で誰かがいなくなるのはもういやだった。
トップスピードで上がると空はすぐ目の前にあった。


―その青さが、憎いというんだ―


振り切れず残ったままのどろどろを空へと、そして、目の前のネウロイにぶつける。
私は、1人だ。
その気持ちがひたすらに私を支配する。




後ろから遅れてやって来たヘルマたちが私のところまで追いついてくる頃に私は2体のネウロイを屠っていた。
威力が弱まるどころか強まっていく一方の自分の固有魔法、かまいたちを使えば、こんな敵、一瞬だった。

「状況終了。オールグリーン、だよ」
「……了解です」

ヘルマが残念そうに息を吐くのを背中に感じながら基地へと向かおうとした、そのときだった。

「ハルトマン!!!」
「え……!?」

突然のヘルマの声と、背中に当たる衝撃に驚いて振り向くと、そこにはヘルマが居て、シールドを張っていた。

「あなたともあろう人が、油断のしすぎです! もう1体来ますよ!」
「くっ」

体勢を整えようとするが、なぜか力が入らない。
魔力の枯渇ではない。それはわかる。だけど、体が動かない。

「私達に、任せてください!」

もう1人出てきたウィッチはそう言うと、固有魔法を使用し始めた。
その発動の感じから分かる。よく知っている。これは、空間把握能力だ。

「1時方向! Aチームは右へ、Bチームは左へ! 来るぞ、両方から仕掛けるんだ」
「了解、Aチーム、私に続いてください!」

そう言って隊員を率いてネウロイへ急接近をかけるヘルマをぼーっと見つめる。

急接近、攻撃、そして距離をとる。
その切り返すときの仕草、攻撃のタイミング。

どれをとっても、トゥルーデのものだった。

あっという間に連携でもってネウロイを撃墜して隊員たちは上空で見ていた私の元へ戻ってきた。


「状況、クリアです」


そう報告するヘルマにそう、とだけ返すと、違うことを聞いた。

「……その戦い方は誰から?」
「……あなたもご存知の方から…バルクホルン大尉が練兵所でたまに教えてらっしゃるのを知っていますか?」
「……」
「あなたの役に立ってくれ、と、言われました」

芯の強い瞳に見つめられて息ができなくなった。

こいつだって、トゥルーデが飛べなくなったときは相当ショックだったはずだ。
でも、それでも前へ。
進んできた結果が今、目の前にあるような気がした。


「私は、同じ能力をお持ちのミーナ中佐からご指導いただきました」


先ほど空間把握能力を使っていたウィッチが言葉を発した。
それから隊員たちも何人かが2人の手ほどきを受けたことを報告する。


なんだ。
なんだよ。
ここに。
ここにいたんじゃないか。


今更気づいて、涙が止まらなかった。

トゥルーデもミーナも飛べなくなったけど、ここには確かに2人が居る。
それが嬉しかった。

「ハルトマン隊長。私がこれからすることを許してください」
「え?」

言葉にうつむいていた顔を上げると、見えたのは目の前で振りかぶるヘルマ。
次に見えたのは明後日の方向だった。
叩かれた、とわかったのは耳にバチン、という小気味のいい音が聞こえ、頬に痛みが走ってからだった。

「あなたは、私達をなんだと思ってるんですか」
「え……」
「私達は、チームです、家族です! それをあなたは、なんだと思ってるんだ、と聞いているんです!」
「……」
「あなた1人で戦っているわけではないんですよ。だから、あなたが背負っているものも私達に背負わせてください」

涙を浮かべて前に立つヘルマはあの日のミーナの強さそのものだった。
「そうだったね……。うん」
「……」
「ありがとう、大切なことを忘れるところだった」
「……」

涙を振り切り、私は前を向いた。私達が帰るべき方向へ。

「……帰ろう」
「はい」

静かに言うと、隊員たちの声が返ってきた。
私達がついています、そう言っているようで、なんだかくすぐったい。
あまりこういう空気は得意ではないものだから、傍らを飛んでいるヘルマに

「それよりもヘルマ。さっきのビンタは効いたよ。それに私のことを呼び捨てにもしてたな」
「え……そ、そんなこと、ありませんですよ!」

さっきまでの凛とした表情はどこへやら。
真面目なヘルマは顔の前で手を振って全身で滅相もございません、というような様相を呈している。

「ふぅん? 軍の交信、記録漁ってみようかな」
「す、すいませんっ呼び捨てにしました! 申し訳ありません!」
「素直でよろしい」

そうすまして空を見上げる。
ヘルマには悪いけれど、おかげで恥ずかしい気持ちも、あせる気持ちもどこかへいったようだ。
ウィッチの習慣か、すがすがしい気持ちになると空を見上げたくなる。
気持ちいいくらい、青い空だった。


君たちと一緒にいた空は、今日も輝いている。

君よ。君たちよ。
空は今日も青い。
君たちがいなくなったというのに、変わらず、青いんだ……。

でも、悲しみにくれているわけじゃないんだ。
君たちは今も、こうして空にいる。
一緒に戦ってくれている。

だから。
Danke shon.
ありがとう。
全てを。君たちがいた空を、忘れない。

(fin.)



あとがき。
ちなみに、このSSには扶桑へと続けるルートがありました。
どうしようかな、と思ったんですが、、ここが切れいいですし、3部作という形で終わりにしようかと!
エーゲルといいながら、エーリカSSになってしまった気がしなくも…。
ゲルトもミーナも居なくなった空でもエーリカは戦うでしょう。でも、きっとゲルトもミーナもそれぞれの方法でエーリカの力になろうとすると思うんですよね…。
それで今回の、ある種世代交代のようなSSを書いてみました。
ヘルマがエーリカの隊に居るのはきっとゲルトが画策したからということでここはひとつ(笑)。

読んでいただきありがとうございました!
まだエーゲルのネタあるのでちょこちょこSS書いていこうと思います!
感想ありましたらいただけると嬉しいです(`・ω・´)





ちなみに。
こちらが扶桑ルートの引きでした。


トゥルーデもミーナも飛べなくなったけど、ここには確かに2人が居る。
それが嬉しかった。
そうして駐屯地に戻ると、ミーナとトゥルーデが出迎えてくれた。
そんなに心配しなくても大丈夫だよ、と思ったのもつかの間。
2人の口から伝えられた情報に私は驚いた。

扶桑戦線に、坂本少佐が復帰した、というのだ。




…この部分だけは1月くらいから考えていたのですが、よくよく考えてみるとこの時期見ていたアニメに引きずられたのでしょうねw
こういうルートもありだな、とか私がこの先を思いついたら(笑)、いつか書くかもしれませんが、完全オリジナルな状態に私が付いていけるかと言われれば…ムリダナw
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